野田 祐輔さん
- 卒業期
- 平成16年 第4期生 博多人形体験講座(平成13年~平成21年迄)
- 受賞歴
- 福岡県中小企業団体中央会賞、国土交通大臣賞、九州経済産業局長賞、福岡県伝統的工芸品功労賞等表彰 奨励賞
- Q1
- 育成塾に入塾したきっかけを教えてください。
もともと九産大の芸術学部で彫刻を専攻していました。
就職を考える段階になったときに、「せっかく学んだ“ものづくり”を活かせる仕事がしたい」と思い、手仕事で生活していける道を探していたんです。
工芸や手仕事全般には興味があったのですが、最初から「博多人形一本!」という感じではありませんでした。そんなとき、友人が博多人形育成塾の2期生として通っていて、彼から話を聞く機会が何度かありました。
「こういうことをやっているよ」「こんなふうに人形を作っていくんだよ」
という話を聞くうちに、「それなら一度、自分もやってみようかな」と思い、受講を決めました。
正直、それまで博多人形のことはほとんど知らなかったのですが、2年間通ってみて、「よし、この道でやっていこう」と決心した、という流れです。
1年目の途中からは、川崎先生に声をかけていただき、山笠人形の作業に関わる機会もいただきました。現場に関わる時間が増えていく中で、自然と「仕事として続けていこう」という気持ちが固まっていきました。
仏像が好きだったこともあり、
「仏像と人形は、形や成り立ちにどこか共通するところがある」
と感じたのも大きかったですね。技術的にも、仏像の考え方がベースになっている部分は多いと思います。
- Q2
- 学んで印象に残っていること、今も活きていることはありますか?
まずは何より、作り方・工程の一通りをきちんと学べたことです。
粘土の扱いから始まり、原型作り、型取り、成形、彩色まで、全部が初めて出会う世界でしたから、
「ああ、博多人形ってこういうふうに出来上がっていくんだ」
と、全部が印象に残っていると言ってもいいくらいです。
育成塾では、1年かけて一体の作品を作り上げるという形ですが、これはあくまで“流れを知る”ためのもので、実際の仕事の一部に過ぎません。
「作品が1つ完成した」という達成感はもちろんありますが、
「本当の意味での“学び”は、弟子入りしてからがスタート」
だと今は感じています。
工房に入ってからは、職人の日々の生活や仕事の流れを、間近で見ることができます。
「こういう段取りで、こういうリズムで、毎日を積み重ねていくんだ」という“職人の生活そのもの”が、一番の教科書になっていきました。
育成塾の学びは、
- 作品づくりの基本的な流れを知る
- 博多人形の世界に“入門する”ための土台をつくる
という意味で、自分にとっては大切な出発点だったと感じています。
- Q3
- 現在の活動、またはこれからの目標を教えてください。
今は、日々の生活のための作品づくりを続けながら、
「どういう作品なら、より多くの人に受け入れてもらえるのか」
ということを、常に考えながら制作しています。
とはいえ、何でもかんでも“万人ウケ”をねらうのは自分には難しいと感じています。ひとりでこなせる仕事量にも限界がありますし、すべてのニーズを網羅するような作り方は、性格的にも向いていません。
その代わりに、
- 狙う世代や層をある程度しぼる
- 自分が本当におもしろいと思えるモチーフに特化する
というスタイルでやっています。
作品としては、もともと仏像が好きなので、
- 仏像の雰囲気をどこかに感じさせるもの
- 少し“怖さ”もありつつ、見ていて面白い顔・形
- 正面だけでなく、後ろから見ても立体的に楽しめる造形
を意識して作っています。
「くるっと回して、後ろも見たくなる人形」
が理想ですね。
実際に、背面まできちんと作り込んでいる作品も多いです。
将来の目標
博多人形という枠にとどまらず、
- もっと日常の風景のなかに“普通に存在できる立体表現”
- 「あ、ここにもあるんだね」と、ふと気づくような造形物
を作ってみたいという思いがあります。
今の博多人形は、
- ガラスケースの中に入れる
- 手であまり触れない
- 湿気や日光に弱い
などの理由から、飾る場所がどうしても限られてしまうのが現状です。
素材や彩色の問題もあって、屋外設置には向きません。
将来的には、
「博多人形的な美しさを保ちながら、もっと開かれた場所でも展示・設置できるようにする」
というのが、業界全体の課題でもあり、自分の関心でもありますね。
そのための技術(コーティングなど)や見せ方を、今後も模索していきたいです。
そして個人的な夢としては、
自分なりに改造し尽くした“理想の工房”をつくること
です。
- 電気窯
- 吹き付け(塗装)専用の部屋
- 作業動線を考えたレイアウト
- いずれは、人が集まって制作できる場
などを備えた“マイ工房”。
昔からの夢なので、いつか必ず実現したいと思っています。
- Q4
- 博多人形づくりに興味を持っている方へ、メッセージをお願いします。
まずは、とにかく**「実際に作ってみること」**だと思います。
体験講座や育成塾などを通して、
- 粘土をさわる
- 形をつくる
- 彩色までやりきって、一本の作品を完成させる
という経験を一度でもすると、
お店や展示で目にする博多人形の“見え方”が大きく変わります。
「この部分はどうなっているんだろう」
「自分ならこうしてみたい」
と、どんどん疑問や興味が膨らんでいくはずです。
そこから先は、さきほど話したように“深み”の世界なので、興味があれば一歩ずつ踏み込んでいってほしいなと思います。
よく話題になるのが、「博多人形作家」と「博多人形師」の違いです。
博多人形作家は、自分の表現・作品を世に問うことに重心がある人、たまたま、その表現手段として博多人形を選んでいる 方。
博多人形師は、自分の作品も作るが、同時に、業界や組合のための仕事・商売としての人形づくりも担う職人です。
型を起こし、複製品を作ることもあれば、価格や売れ方まで含めて考え、「日々の仕事として成立させる」ところまで含めてやっていくのが博多人形師の仕事です。
そこには厳しい現実ももちろんありますが、
- 思った通りの形に仕上がったとき
- 顔を何度も描き直して、ようやく全体が“ピタッ”とまとまった瞬間
- たくさんの仕事を並行して進め、すべて終えたときの達成感
こうした面白さ・やりがいが、やっぱり一番の原動力になっています。
そして、博多人形の大きな特徴は、
アイデアを考えるところから、原型制作、型取り、成形、彩色まですべての工程をひとりで完結できる工芸
だということです。
最初に頭の中で思い描いた完成形に、どこまで近づけられるか――。
その挑戦を繰り返すこと自体が、とても面白い仕事だと思います。
興味のある方は、ぜひ一度“作る側”に回ってみてほしいですね。
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